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父の友エッセイ―[2]
福音館書店から発行されているお母さん向けの月刊誌
『母の友』に短期連載したエッセイの第2回です。
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今回のテーマは「影絵遊び」。
『いわいさんちへようこそ!』の中でも少し紹介していますが、
わが家の影絵遊びが生まれたエピソードや、影絵について考えたことを書いてみました。

お楽しみください。



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父の友エッセイ―[2]

影絵遊びの奥深さ

岩井俊雄 

 三年ほど前、家を建てました。僕とママとロカちゃんにとって初めての「わが家」です。
 シンプルな部屋が好きで、寝室の壁から天井まで真っ白な漆喰にしました。それまで住んでいた賃貸マンションは木目の天井だったので、寝るときに見上げる天井が白くなったのがとても新鮮でした。
 布団に入って、その白い天井を見上げて考え事をしているうちに、ふと、天井を使って影絵遊びができるんじゃないかな? と思いつきました。少し前に家族で観に行った、藤城清治さんの影絵劇もヒントになりました。子どもが寝付く前に、目の前に影絵の世界が広がったらさぞかし素敵そうです。
 でも、影をどうやって出したらいいのかな…ろうそく? 懐中電灯? ろうそくは危ないし、懐中電灯もあまり光が広がりません。そうだ、いつもキーホルダーにつけている小さなLEDのライトはどうだろう? と、試しに自分の手の影を壁に映してみたら、とてもきれいな影ができることがわかりました。光源が小さければ小さいほど、遠く離れてもくっきりした影が映ります。その点、最近よく使われるようになった白いLEDはうってつけでした。
 さっそく夜寝る前にロカちゃんと影絵遊びをやってみました。布団に寝転がりながら、LEDの光の前に手をかざして、天井に影を映してみます。部屋の電気を消してすぐにはぼんやりとしか見えなかった影が、目が慣れてくると、こんな小さなLEDでこれだけ見えるのか!、と驚くくらいはっきりと見えてきました。自分たちの手が何倍にも大きくなって映るのが面白く、ロカちゃんと手でいろいろな形を作っておおはしゃぎしていたら、二人とも早く寝なさい! とママにしかられてしまいました。
 すごく面白かったので、翌日、影絵用の人形を作ってみました。といっても家にあったボール紙を動物などの形に切り抜いただけの簡単なものです。一応、手で持つところを透明にしたくて、包装用のプラスチックケースを長四角に切って、両面テープで貼り付けてみました。布団に家族三人が「川の字」に寝転がって、僕がおなかの上にLEDライトを乗せて、両手で人形を持って動かしながら即興でお話をします。やってみると、人形が単純でも、人形を光に近づけたり離したりすることで、影の大きさがものすごくダイナミックに変わって、とても面白いことがわかりました。その日から、毎晩、一つか二つ新しい人形を作っては、前の日に続いて、新しい登場人物が加わるようにお話をふくらませていきました。
 そのうち、影絵ならではの物語がいくつか出来上がりました。中でも特に気に入っているのは、ネズミとクジラのお話です。小さなネズミが自分の体が小さいのを気にして外にも出られないでいると、ヒヨコがやってきて、体を大きく見せる「影絵の魔法」を教えてくれます。魔法を教えてもらって喜んだネズミは、仲良しのペンギンさんに、世界で一番大きな動物に自分の魔法を見せたい、と相談します。ペンギンさんは、ネズミと一緒に船に乗って、クジラに会いに行きます。そこでネズミが魔法を使って体をすごく大きく見せると、クジラは驚いて、自分より大きな動物には会ったことがないからうれしい、とお礼を言い、ネズミは大喜び。その日から、自信がついたネズミは普通に外に出られるようになった、というお話です。
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 このお話で、ネズミが魔法で大きくなるところ、またクジラが遠くの海からだんだんと船に近づいてくるところなどは、離しておいた人形を徐々に光に近づけていって、最後には天井いっぱいくらいに影を大きくして見せます。単純ですが、うまくやると本当に自分たちがクジラに飲み込まれそうなくらいに大迫力の見せ方ができるのです。そんな工夫を重ねながら、わが家ではしばらく影絵に大夢中で、そのうちロカちゃんも影絵の人形を作って、自分でも影絵のお話をやりたがるようになりました。寝るどころか興奮してしまって、ママには何度もしかられましたが。
 長年映像の仕事をしている僕は、正直言って、それまで影絵をちょっと馬鹿にしていました。でも、この天井影絵をやるようになって、影絵の世界は、映画やテレビと違って四角いフレームにおさまらない、ずっと自由で空間的な表現なのだなあ、と目からウロコが落ちたのです。工夫次第で、さきほどの影の大きさを自在に変えたりするような、大胆な表現も可能です。
 いま映像といえば、大型画面のハイビジョンテレビの時代。ツルツルして、くっきり鮮やかが売り物の映像ばかりで、影絵のような、ぼやけた味わいの映像を見る機会はほとんどありません。デジタルの世界は、情報をカチッと伝えられる反面、人の本来持っていたアバウトさを失っているように思います。
 障子に映る影。町内のこども会で見た、白いシーツのようなゆがんだスクリーンに映し出された野外映画。満月の夜道、気がつくと月の光に照らされて地面にくっきりと自分の影が浮かんでいた記憶。かすかな光に目を凝らし、影にハッとするような、原体験として強く刻まれるような体験の機会が、今の子どもたちにもっとあればいいのになあ、と思います。
 影絵遊びをたいしたことない、と思っていた僕が、実際やってみるとずっと豊かな世界がそこにあるのだ、と痛感したように、どうも我々はつい見かけや、知識や言葉で理解している範囲で、ものごとに満足してしまうクセがついてしまっているようです。これも文字や映像によるコミュニケーションが発達しすぎて、目に見えない「感じる」世界を切り捨ててきてしまったせいかもしれません。でも、小さな子どもたちは、まだまだ本質がむき出しになった「見えない世界」とコンタクトを取れる純粋で鋭い感覚を備えているように思えます。その子どもたちに、もっと深く物事の本質に向かい合わせる機会をつくる努力をしなければいけないな、と影絵の面白さを通して考えさせられたのでした。

初出◆福音館書店 月刊「母の友」 2006年12月号
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注:「母の友」誌上では、佐藤直行さんという方が素敵な挿絵をつけて
くださいましたが、著作権の関係上ここでは文章のみ転載しています。

by iwaisanchi | 2007-01-15 23:35 | ◆岩井パパのエッセイ
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