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感覚のリセット―[8] 21世紀はどこに?
紀伊國屋書店のフリーマガジン「スクリプタ」8号に書いたエッセイをご紹介します。
これは、4月にTENORI-ONの世界ツアーから帰ってきた頃に書いたものです。
これまでのエッセイと少し雰囲気を変えてみました。
読んでみてください。
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感覚のリセット― [8]

21世紀はどこに?

岩井俊雄

f0118538_13394936.jpg SF作家のアーサー・C・クラークが亡くなった。彼がスタンリー・キューブリックとともに作った映画『2001年宇宙の旅』を、僕は高校生の時に名古屋の「中日シネラマ劇場」という映画館で見た。緩やかなカーブを描く巨大なスクリーンに投影されるシネラマ方式の映画を体験できたのは、後にも先にもこの時だけだ。その唯一のシネラマ体験が『2001年』だったのは、今から思えばなんと幸福だったことだろう。その徹底した映像美も、難解ながら知的想像力をかき立てられる内容も、すべてがシネラマの大迫力の画面にふさわしく、僕は十二分に「21世紀」を堪能して映画館を出た。
 それからすでに30年が経ち、僕らはとっくの昔に本当の21世紀に来てしまった。ケータイもハイビジョンもわが家にやってきたけれど、でも日常のほとんどは20世紀となんら変わらない。『2001年』に描かれたような21世紀は、どこにあるのだろう? 時々ふとそんなことを考えてしまう。
 未来を予測する最良の方法は、未来を創りだすことだ――これは「パソコンの父」とも呼ばれるコンピュータ科学者アラン・ケイの言葉だが、僕自身も自分の手で未来を創ってみたくて、ヤマハと一緒に『TENORI-ON』という楽器を開発した。光と音を同時に演奏できる21世紀のデジタル楽器である。楽器といっても、従来の楽器のイメージとはほど遠い。知らない人には、それこそSF映画に出てくる小道具にでも見えるだろう。決してSFを意識してデザインしたわけではないが、もしかしたら僕が学生の頃に映画や小説から吸収していた21世紀のイメージが無意識に現れてしまっているのかもしれない。かつて夢見た21世紀は、自分の頭の中にしかないのだろうか。
 そのTENORI-ONの発売イベントで、2週間世界ツアーに行くことになった。ベルリン・パリ・モントリオール・ニューヨーク・サンフランシスコと地球をぐるりと一周する旅である。これまでも仕事で海外へ出かけることはあったが、家族を置いて丸々2週間というのは初めてだ。いつもは旅先から自宅への連絡はメールや電話ですませていたのだが、今回は期間が長いこともあり、スカイプによるテレビ電話を試してみることにした。
 スカイプとは、インターネット上の無料の電話サービスである。ネットにつながったパソコン同士なら、スカイプで世界のどこからでもタダで電話ができるようになる。高速なネット回線が各家庭に普及すると同時に、インターネットを使ったいわゆる「ネット電話」が話題になって久しいが、その中でもスカイプは世界的に最も成功を収めている。
 2年ほど前、オーストリア滞在中に初めてこのスカイプを試した。ノートPCにマイクをつなぎ、ホテルから東京の家族と会話したのだが、まずその臨場感に驚いた。無指向性のマイクと高音質のスカイプのおかげで、家族それぞれの声のみならず、部屋の物音や外の自然音など全てがリアルに聞こえてきた。受話器ではなくスピーカーで音を聞いているせいもあって、壁を隔てた隣の部屋と会話しているような錯覚に陥った。
 その頃すでに、スカイプでテレビ電話ができるのは知っていたが、その時はあえて音声だけにとどめた。多少僕のアマノジャクな性格もあるが、いきなりテレビ電話ではなく、まずは音声だけのスカイプを体験したかったのである。進化の段階を追わないと、テクノロジーの真価は見えてこない――メディアアーティストとして、常々思っていることである。そしていよいよ今回の旅のために、僕は専用のビデオカメラを買い、スカイプによる海外からのテレビ電話に挑戦することを決意した。
 最初の宿泊先であるベルリンのホテルには夜遅くに着いた。世界時計を調べると、まだ日本は未明である。ひと眠りすることにした。目が覚めて、まず家内の携帯に「スカイプを立ち上げて待っていて」とメールを入れた。さあ、初めてのテレビ電話はうまくつながるだろうか? ドキドキしながら呼び出しボタンを押す。次の瞬間映ったのは、驚いたことに画面をのぞき込む6人もの女の子たちの姿だった。僕のふたりの娘以外に、たまたま近所のお友だちが4人も遊びに来ていたのだ。僕がドイツからテレビ電話をかけてくると聞いて、全員今か今かと待っていてくれたそうである。みんな珍しそうにこちらを見つめている。画像は時々粗くなったり、動きが遅れたりするが、予想以上にきれいである。子どもたちの笑顔や笑い声と一緒に、わが家のリビングを照らす春の日差しが、まだ暗いドイツのホテルの部屋にも差し込んだようで、明るい気持ちになった。
 同時に僕は『2001年宇宙の旅』の一シーンを思い出した。月面基地での異変を調査するために地球から宇宙ステーションに到着した博士が、自宅にテレビ電話をかける。画面に現れたのは、幼い女の子。明日誕生日を迎える娘に、プレゼントは何がいい?と博士は尋ね、女の子は「おさるさん」と答える。全編スタイリッシュで哲学的な雰囲気に包まれたこの映画の中で、唯一と言っていいほど人間味を感じさせる微笑ましい場面。
 スカイプのウインドウに映った、6人の女の子と他愛のないおしゃべりをしながら、僕は自分の中にかつて刷り込まれた21世紀を初めてリアルに感じていた。
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初出 scripta no.8 (紀伊國屋書店)

by iwaisanchi | 2008-07-14 13:35 | ◆岩井パパのエッセイ
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