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優しい光の記憶
幻灯機について以前書いたエッセイがあるので、この機会にご紹介しておきましょう。
紀伊國屋書店がかつて発行していた「ifeel~読書風景」という季刊誌に
僕は<ハッピーテクノロジー生活>というシリーズエッセイを連載していました。
その2回目に書いたのがこの幻灯機に関するエッセイです。
まだロカちゃんが3才の頃です。
読んでみてください。
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ハッピーテクノロジー生活― その2

『優しい光の記憶』

岩井俊雄
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 先日、下北沢のアンティークショップで「ネオンビジョン」という古いオモチャを見つけた。カラフルな箱に印刷された懐かしい雰囲気の写真から、家庭で楽しむ一種の子供向けスライドプロジェクターだとわかり、映像関係のオモチャに目がない僕は、すぐに店の主人に中を見せてくれないか尋ねてみた。ところが、それは1969年発売の未開封のデッドストック品で、一度でも開けてしまうと価値が下がるから見せられないという。見れないとなるとますます欲しくなり、思いきって買ってしまった。
 箱はかなり古ぼけて一部破れていたが、開けてみると中のビニール袋に包まれた「ネオンビジョン」本体は、35年も前のものとは思えないくらいピカピカだった。1962年生まれの僕は、まさしくこのオモチャを買ってもらった側の世代で、自分と同世代のオモチャが時を越えて新品のまま目の前に現れたことにすごく興奮した。説明書を見ると、本体に円盤型のフィルムをはめ込み、ソノシートに録音された物語を聞きながら、ボタンを押してひとコマづつ進めていくという仕組みらしい。箱の中には「三びきの子ぶた」と「ジャックと豆の木」の二つのフィルムとソノシートのほか、親が読み聞かせするための小冊子、さらには当時の白熱電球までそのまま入っていた。見ると電球の形が現在と違ってほんのちょっと細長くいびつで、なんとも懐かしい感じだった。電球とフィルムをセットし、部屋を真っ暗にしてスイッチを入れると、35年前に当時の子供たちが夢中になって見たであろう映像が浮かび上がった。それはなんとも柔らかい光で、久しぶりに見た暖かい感触のする映像だった。その光を見ながら、僕自身のいろいろな光の映像の記憶がよみがえってきた。
 映画館が一つもない田舎町に育った僕は、子供の頃の映画といえば、こども会で夏に上映するゴジラやガメラなどの野外上映会だった。木と木の間に張られた白布のスクリーンは風が吹くたびにゆれて、それに合わせて画面もゆらゆらゆがんでいた。投影された映像が、表からも裏からも見えるのが面白くて、スクリーンの前と後ろを行ったり来たりした。また、藤子不二雄Aの自伝漫画『まんが道』には、手作りの幻燈機を使って主人公の二人が自作の絵物語を競い合って上映する話が描かれているのだが、中学生の頃、それを読んで僕も真似をして同じものを作ったことがある。自作の幻燈機で自分の部屋の壁に、ぼんやりとだが映像が映った時の感激をはっきりと思い出す。どの体験も思い出すたびに、独特のにじんだほわっとしたイメージとともに、なんとも言えないうれしい気持ちがこみ上げてくるのはなぜだろう? 心地良かった夢を思い出す時のような、記憶の中に閉じ込められていた優しい光が、じわじわと頭の中にしみだしてくるような感覚。
 今のディスプレイやプロジェクターは明るい部屋でも見られるようにどんどん明るくなっているが、その分昔のように暗い部屋にぼんやりと浮かび上がるような光の体験ではなくなっている。今よりももっと夜が暗かった時代に、目を凝らして見つめた光。ぬるめのお湯でゆっくりと身体の芯まであたたまるような、そんな光の見方だったからこそ、記憶の中にしっかりと光がしみ込んでいるのではないだろうか。月の光に太陽とは違った神秘性と美しさが宿っているように、昔の幻燈や映画の優しい反射光は、現代の映像機器にはない不思議な魅力を備えていたように思う。
 7年ほど前、作品制作のためにドイツにしばらく滞在していたとき、ハンガリー出身の作家と仲良くなって、彼の家で小さな古い幻燈機を見せてもらったことがある。彼には5歳くらいの娘さんがいて、奥さんと毎晩のようにその幻燈機を使ってお話を聞かせてあげるのだと聞いた。幻燈機の中に35mmのロール式の絵物語のフィルムを入れて、手でくるくる巻き取りながら、美しい手描きの絵の下に書いてある字幕を、絵本や紙芝居のように読み進めていく。夜、部屋を暗くして映像を投影するのは、小さな子供には幻想的なとても素敵な体験なんだ、と彼が言っていたのが印象的だった。その後聞いた話によると、ハンガリーでは「ディアフィルム」といって、その昔、ほとんどの家庭に幻燈機とフィルムのセットがあって、お母さんが子供にお話を聞かせてあげていたという。僕の友人もそういった体験があって、自分の娘に同じことをしてあげていたのだろう。お母さんの語りとともに思い出される優しい光は、何にもまして人々の楽しい記憶となっているに違いない。
 親子の間にゆっくりと流れる時間。優しい光と記憶。そんなことを考えながら、僕は3歳になる自分の娘に、いま「ネオンビジョン」を見せている。
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初出 ifeel~読書風景 No.27 / 2004 冬号 (紀伊國屋書店)

by iwaisanchi | 2008-07-27 02:23 | ◆岩井パパのエッセイ
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