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感覚のリセット― [2]
紀伊國屋書店のフリーマガジン「スクリプタ」に連載中の
シリーズエッセイ『感覚のリセット』の第2回をおおくりします。
感覚のリセット― [2]_f0118538_22594117.jpg
今回は子どもの名前付けについて。
わが家の子どもたちの名前の秘密(?)について書いてみました。

お楽しみください。



感覚のリセット― [2]_f0118538_23544518.gif

感覚のリセット― [2]

うろな、えれふぁ、のっき

岩井俊雄感覚のリセット― [2]_f0118538_230221.jpg

 つい最近、次女が生まれた。
 子どもが生まれると、まずやってくる大きな〆切。それは名前を決めることである。期限は生まれた日から2週間。このエッセイも〆切をとうに過ぎてから書き始める僕のような人間には非常につらい。6年前、長女のロカちゃんが生まれた時もギリギリまで悩み、〆切直前に役所に駆け込んだ。
 そもそも、子どもが一生使い続けることになる大事な名前を、たった2週間で決めろ、というのは厳しすぎないだろうか? 一度出生届を出してしまったら、めったなことでは変えられない(妹尾河童さんのように、裁判所に申し立てをすれば変えられる場合もあるらしいけれど)。もっと期間を延ばせないのか、とか、提出後一週間以内は訂正可能にして欲しい、とも思うが、そうなったところで原稿の〆切と同じで、結局は悩むだけだろうか。前もって考えておく親もいるようだが、子どもの顔を見ないで名前を決めるのは、絵を描かずしてタイトルだけ決めるようなもので、本人をこの目で見ないと名前のイメージも湧いてこない。
 僕自身、「俊雄」ではなくてもっとカッコイイ名前だったらなあ、と子どもの頃に何度も思った。今では親に感謝しているし、実力が伴えば名前なんて関係ない、とも思うが、子どもにいい名前をつけたいと考えるのは、自分はこうありたかった、という人生再出発への欲望ではないか。生まれてくる子どもの容姿や性格は選べなくても、名前だけは100%自分が決められる。だからこそ名前付けは、自分自身のセンス、欲望、希望などと深く向き合う作業なのである。
 だが実際は、自分のセンスだけではなかなか決められないところが難しい。突飛な名前で子どもがいじめられても、りっぱすぎて名前負けしても困る。最近は当て字の名前が非常に多いが、読めない、もしくは毎回読み方を間違えられるのもどうかと思う。でも、どうせなら外国でも通用する名前がいい。さらには手書きよりもパソコンや携帯で名前を読み書きすることが多い今は、画面上で読みやすく、簡単に入力変換できる字がいい――などと、いろいろ考え始めると頭が痛くなる。世間の常識や、流行の波も受け止めながら、その中で自分のセンスを最大限発揮させなければならないのが、名前付けの難しさなのだ。
 長女ロカちゃんの時、名前を考えるのに、僕はあるコンセプトを考えた。それは「本名で日本画家になれる」こと。東山魁夷、小倉遊亀、速水御舟、伊東深水、川合玉堂、前田青邨など、ちょっといいなと思う日本画家の名前は、音の響きが変わっていて、それでいて日本の伝統文化を感じさせる。実際に娘を日本画家にしたいわけではないが、漢字や音のイメージとして、こうした日本画家的な雰囲気を持った名前をつけたいと思って掲げた指針だった。そして悩みに悩んだ結果、2月末生まれの娘に「ふきのとう」のイメージが重なり、ふとひらめいて「蕗花(ろか)」とつけた。メールで名前を知らせたら、友人のデザイナーから「12ポイントのフォントで表示するとかわいいね」と返事がきた。
 苦労したかいあって「蕗花」は我ながら、なかなかうまくいったと思っていたのだが、今回新しく生まれた次女の名前にはほとほと困った。同じ2文字にしたいが「ろか」に匹敵する名前は簡単には見つからない。だいたい、ひらがな2文字の順列組み合わせで、女の子の名前として使えるものには限りがある。あきらめて3文字名前も考えはじめたが、ピンとくる名前が思いつかなかった。漢字から攻めようと、人名漢字リストを最初から一字一字全部見てみたが、ますますわからなくなるだけだった。
 行き詰って、ロカちゃんにも「赤ちゃんの名前考えて」と頼んでみた。するとすぐに「いいの思いついた!」とか言いながら、次々とメモを始めた。なんだか楽しそうである。しばらくしてのぞきこむ。書かれていたのは「うろな」「えれふぁ」「なりは」「もらな」「こりか」「かりな」「こるの」「のっき」「ゆうざ」「ほりの」「わりな」「こつみ」…などなど。本当に子どもの言語感覚にはびっくりさせられる。どれもへんてこだが、ちゃんと名前っぽく、時代の一歩先を行っているようだ。さすがにこの中から選ぶ勇気はなかったが、ロカちゃんが大人になるころには、もしかして「うろな」や「えれふぁ」も普通になっているかも、と楽しい想像をめぐらせた。
 〆切日が近づき、深夜になって、もう今日はあきらめるか…と風呂に入った瞬間、突然これだ! という名前がひらめいた。その名は「結々(ゆゆ)」。お湯につかって「ゆゆ」じゃ、笑い話っぽいけれど、まじめな話、急に天から名前が降ってきたように感じた。インスピレーションは、いつでも苦労の末に突然降りてくる。家族を結び、人と人を結び、世界を結ぶのを願った名前である。
感覚のリセット― [2]_f0118538_072366.gif

by iwaisanchi | 2007-01-04 23:00 | ◆岩井パパのエッセイ
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