クレヨンハウスから発行されている月刊クーヨン最新号の特集は
「子どもを認めてしかる・ほめる」。
僕は子どもをほめるのは結構うまくやれているのではないか、と思っているのですが
逆にしかるのは苦手で、すごく難しいなあ、といつも思います。
子どもをしかるたびに、自分自身を問われているような気がしてしまうのです。
ほめるだけでなく、子どもたちをうまくしかれる父親でありたいと思うのですが、
毎回試行錯誤の連続です。

さて、そのクーヨン最新号に『こころに響いた「わたし」の しかられ・ほめられ体験』というテーマで
短い文章を依頼されました。
子どもの頃にしかられた、または、ほめられた体験で、
印象に残っているエピソードをお教えください、ということで
うーんと考えて、思い出したのが、ある夏の日のプールでの出来事です。

僕以外にも、絵本作家の五味太郎さん、酒井駒子さんなどがご自分の体験を披露されています。
読んでみてください。

こころに響いた「わたし」の しかられ・ほめられ体験
プールで父が教えてくれたこと
岩井俊雄
小学校2年か3年の夏、家族でプールに行った時のことです。僕はちょっとした悪ふざけがしたくなって、プールサイドに立っていた父親に後ろからそうっと近づき、えいっと背中を押してプールの中に突き落としました。すると、バシャンと水の中に沈んだ父はしばらくして浮かんできたものの、顔を下に向けたまままったく動きません。僕は青くなりました。まもなく、それは父のとっさの演技だったことがわかり、ほっと胸をなでおろしたのですが、水から上がってきた父にはひどくしかられました。軽い冗談でも、人の生死に関わるかもしれないことを絶対にやってはいけない、と。
今でも、その時のことは、プールに浮かぶ父の背中のイメージとともに、しっかりと脳裏に焼きついています。ただ言葉で叱るだけでない、父のとっさの行動は、幼かった僕にとても強い印象を残しました。ふざけてやってよいことと悪いことがあるんだぞ、という人としての基本を父流に一つ教えられたのです。

月刊クーヨン 2008年9月号 (クレヨンハウス)